建設業の財務諸表
建設業法に定める建設業者は、会社計算規則の規定(税務署へ提出する決算報告書など)ではなく、建設業法施行規則の定める様式に従って財務諸表を作成しなければなりません。
建設業許可申請書や事業年度終了後に提出する決算変更届、経営事項審査申請の際は、国土交通省令により作成された建設業法特有の財務諸表を添付することが義務付けられています。
建設業法施行規則で定める様式と会社法計算規則で定める様式の違いとして、建設業会計では一般の勘定科目と異なり、建設業に特有な勘定科目が使用されています。
<勘定科目例>
「売上高」→「完成工事高」
「売掛金」→「完成工事未収金」
「仕掛品、前渡金」→「未成工事支出金」
「買掛金、未払費用」→「工事未払金」
「前受金」→「未成工事受入金」
また、原価の算定に必要な「労務費」についても、一般の業種とは異なり、建設業法施行規則による勘定科目分類で、「工事に直接従事した直接雇用の作業員に対する賃金、給与、手当等」と規定しています。よって、工事に間接的に従事する現場監督や常用作業員などの人件費は工事原価経費で処理することになります。
完成工事高とは
建設業会計での完成工事高とは、工事進行基準により収益に計上する場合における期中出来高相当額及び工事完成基準により収益に計上する場合における最終総請負高のことをいいます。
免税事業者以外は税抜方式を採用し、取引に係る消費税及び地方消費税額を除いて計上します。
共同企業体により施工した工事については、共同企業体全体の完成工事高に出資の割合を乗じた額または分担した工事額を計上します。
完成工事原価とは
完成工事原価とは、工事原価のうち損益計算書の完成工事高に計上された工事に対応する工事の原価のことをいい、完成した工事の施工に直接必要となった費用の合計額のことです。完成工事原価を表示することで、完成工事総利益が明らかになります。
完成工事原価報告書は、材料費・労務費・外注費・経費の4要素に区分して表示作成するよう定められています。
「材料費」・・・工事のために直接購入した素材、半製品、製品、材料貯蔵品勘定等から振り替えられた材料費。
「労務費」・・・工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金、給料、手当等。工種、工程別の工事の完成を約する契約でその大部分が労務費であるものは労務費に含めることができる。
「(うち労務外注費)」・・・労務費のうち、工種、工程別の工事の完成を約する契約でその大部分が労務費であるものに基づく支払額
「外注費」・・・工種、工程別等の工事について素材、半製品、製品等を作業とともに提供し、これを完成することを約する契約に基づく支払額。ただし労務費に含めたものを除く。
「経費」・・・完成工事について発生し、または負担すべき材料費、労務費、外注費以外の費用で、動力用水光熱費、機械等経費、設計費、労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、従業員給与手当、退職金、法定福利費、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、雑費、出張所等経費など。