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経審で認められる技術職員


経審で認められる技術職員

経審で認められる技術職員は、審査基準日における建設業に従事する職員のうちで経審を受ける業種について認められる一定の資格または要件を満たす者です。

平成23年4月の改正により技術職員に必要となる雇用期間が定められ、

審査基準日以前より6か月を超える

恒常的な雇用関係があり、かつ雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている建設業に従事する職員の中で、一定の資格または要件を満たす者となりました。
雇用して6か月未満の者は、たとえ有資格者であっても評点の対象にはならないということです。

法人の監査役や会計参与は含まれておりません。

また、雇用期間が限定されている技術職員のうち、審査基準日において「高齢者の雇用の安定等に関する法律」に規定する制度対象者(65歳以上の者)も認められております。

経審で認められる技術職員の内容

  1. 1級技術者(監理技術者資格者証保有者かつ監理技術者講習受講者)
  2. 1級技術者(監理技術や資格者証を取得していない者)
  3. 基幹技術者(登録基幹技能者講習修了者)
  4. 2級技術者
  5. その他の技術者(実務経験・一定の民間資格保有者)

平成20年4月の改正により、経審上認められる技術資格は、

1人2業種まで

の評価に限定されることとなっています。

よって1級建築施工管理技士など、1つの資格で様々な業種の専任技術者になることが可能な技術職員であっても、経審上は2業種のみが評価対象となり、それ以上は兼務担当できません。

登録基幹技能者講習とは

平成20年4月の改正により、国土交通大臣より登録を受けた登録基幹技能者講習実施機関の講習を受けた基幹技能者が経審で加点されることになりました。

講習実施機関は、建築系・土木系・電気工事や造園工事など各専門工事に分かれていますので、各28業種に該当する機関を事前に確認しましょう。

監理技術者講習とは

平成20年4月の改正で、1級技術者で監理技術者資格者証を保有しており、かつ監理技術者講習を受講している者が評価の対象となりました。

評価対象となる者は、以下のすべてを満たしている必要があります。

  1. 1級技術者
  2. 審査基準日において有効な監理技術者資格者証の交付を受けていること
  3. 審査基準日の翌日以前5年以内に監理技術者講習を受けていること

監理技術者としては、1級技術者以外にも国土交通大臣の認定による者や一定の実務経験を満たしている者も含まれておりますが、これらの者は評価対象にはならず、あくまでも1級技術者だけとなります。

また、有効な監理技術者資格者証を保有しているが監理技術者講習は受講していない者、監理技術者講習を受講したが5年以上前のものである、監理技術者資格者証の有効期限が切れている者、監理技術者講習のみを受講している者などは評価対象とはなりません。

若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況の新設

経審の法改正により「若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況の新設」という項目が定められ、平成27年4月より施行されます。これにより若年の技術者及び技能労働者について次の2点を評価されることになりました。
ここでいう若年技術職員とは、技術職員のうち審査基準日において満35歳未満の者
をいいます。

  1. 若年技術職員の継続的な育成及び確保の状況

    審査基準日時点で、若年技術職員の人数が技術職員の人数の合計の15%以上の場合はW点において一律1点の加点

  2. 新規若年技術職員の育成及び確保の状況

    審査基準日よりさかのぼって1年以内に新たに技術職員となった若年技術職員の人数が審査基準日における技術職員の人数の合計の1%以上の場合、W点において一律1点の加点

その他社会性等について


建設業の営業継続の状況とは

経審における建設業の営業年数とは、建設業の許可または登録(許可以前の制度)を受けたときから起算して審査基準日までの年数を計算し、評点に反映されます。

創業当初に建設業の許可または登録を受けていなかった期間や、途中で何らかの理由で許可または登録が切れていた期間は、営業年数には計算しません。

また、個人から法人に組織変更した場合は個人からの営業の継続性が認められ、法人としての許可または登録を切らすことなく受けた場合は、個人の最初の許可または登録から計算します。なお、1年未満の端数は切り捨てて計算します。

評点については、建設業の許可または登録を受けてから5年以上から加点評価され、最大で35年以上までが加点評価されます。

防災協定締結の有無とは

防災協定締結の有無とは、審査基準日において、国・独立行政法人・地方自治体などとの間で災害時の建設業者防災活動などについて定めた協定を締結しているかをいいます。
防災協定を締結している建設業者は、社会的責任の評価を重要視する観点から加点評価されます。

防災協定は単社で締結したものでも、建設業者団体などを経由したものでも認められます。ただし、単に所属している建設業者団体などが防災協定を締結しているという場合や、建設業者団体に加入しているというだけでは認められません。

経審の対象となる防災協定は以下の2項目です。

  1. 国・独立行政法人・地方自治体等と災害時の防災活動などについて定めた協定を締結している
  2. 建設業者が加入する団体が、国・独立行政法人・地方自治体と災害時の防災活動などについて定めた防災協定を締結している
  3. 上記内容が確認できる防災協定書、災害時の防災活動に一定の役割を果たすことが確認できる書類

法令順守の状況とは

法令順守の状況とは、審査期間内に国土交通省または都道府県から「営業停止処分」や「指示処分」を受けたことがないかどうかをいいます。該当する場合、社会的責任の評価を重要視する観点から減点評価されます。

経審の際の申請書への記載は自己申告となりますが、これを故意または過失で処分状況を誤って記載した場合は虚偽申請となってしまいます。
経審で虚偽の申請を行った場合、営業停止30日以上という処分がありますので、十分に注意してください。

建設業の経理状況とは

建設業の経理状況とは、「監査の受審状況」と「公認会計士等の数」の2項目の審査をいいます。

監査の受審状況

  1. 会計監査人設置会社の場合
    会計監査人が該当会社の財務諸表に対して、無限定適正意見または限定付適正意見を表明している場合、有価証券報告書または監査証明書を提示することで加点評価されます。
  2. 会計参与設置会社の場合
    会計参与が会計参与報告書を作成している場合に加点評価されます。
  3. 経理責任者による自主監査
    社内の一定の資格を持つ経理責任者が、「建設業の経理が適正に行われたことに係る確認項目」というチェックリストを用いて確認を行い、自主監査した旨の署名押印を行った場合は加点評価されます。
    ただし、この自主監査の場合、加点措置を受けたにもかかわらず後日虚偽申請が発覚した場合は、通常より重い監督処分が下されることになっています。

公認会計士等の数

建設業に従事する常時雇用の役職員のうち、公認会計士や税理士など一定の資格を持っている者の数に応じて加点評価されます。

  1. 公認会計士
  2. 会計士補
  3. 税理士
  4. 公認会計士。会計士補、税理士になれる資格を有する者
  5. 1級・2級建設業経理士

研究開発の状況とは

研究開発の状況とは、平成20年4月の改正で追加された評価項目のことで、加点対象は会計監査人設置会社に限られ、公認会計士協会の指針などで定義された研究開発費の金額を評価し、計上される研究開発費の額(5000万円以上)により加点されます。

研究開発の状況では、審査対象年とその前年の2年平均の研究開発費の額が評価されます。
ただし、会計監査人が無限定適正意見または限定付き適正意見を表明している場合にかぎります。

建設機械の保有状況とは

建設機械の保有状況とは、平成20年4月の改正で追加された評価項目のことで、地域防災の備えとして災害の応急復旧時に使われることの多い建設機械の保有状況が加点評価されます。

建設機械(ショベル系掘削機・ブルドーザー・トラクターショベル)を保有しており、加えて特定自主検査を受けていることが必要となります。
審査基準日から1年7ヶ月以上の試用期間が定められているリース契約を締結している場合も対象となります。

経審で加点されるには、売買契約書やリース契約書などの保有状況を確認する書類、特定自主検査記録表など、行政庁により様々な書類が求められます。また加点対象ではない建設機械もありますので、導入前に必ず行政庁との確認を行いましょう。

※平成27年4月の法改正により、上記に加えて下記の3点が評価項目に追加されました。

  1. モーターグレーダー
    建設機械抵当法施行令(昭和29年政令第294号)別表に規定するもの。
  2. 大型ダンプ
    土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法(昭和42年法律第131号)第2条第2項に規定する大型自動車のうち下記を満たすもの。
    経営する事業の種類として建設業を届け出ており、表示番号の指定を受けていること。
  3. 移動式クレーン
    労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第12条第1項第4号に規定するつり上げ荷重3トン以上のもの。

いずれも所定の定期検査を受けていることが加点の要件となります。

ISO認証の取得状況とは

ISO認証の取得状況では、ISO9001(品質マネジメントシステム)およびISO14001(環境マネジメントシステム)の規格による登録を受けており、以下の条件を満たしている場合に加点評価されます。

  1. 認証範囲に建設業が含まれていること
    認証範囲に建設業法で定める28業種のいずれかが明記されていることが必要です。
  2. 認証取得した際の審査登録機関が、(財)日本適合性認定協会(JAB)の認定を受けていること
  3. 会社全体が認証範囲であること

法定外労災とは

正式には法定外労働災害補償制度といい、建設労働災害の発生に際し、政府の労働災害補償制度とは別に上乗せ給付を行うもので、(財)建設業福祉共済団、(社)全国建設業労災互助会、全国中小企業共済協同組合連合会の互助事業のほか、下請担保特約付き労働災害総合保険など民間の保険事業などがあります。
審査基準日において、これらの給付に関する契約を締結いていることにより社会性等の評価Wで加点評価されます。

経審の審査では審査基準日において、以下の4点全てを満たしていることが必要となります。

  1. 業務災害および通勤災害が対象とするものであること
  2. 当該給付が申請者の直接使用関係にある職員だけでなく、申請者が請負った建設工事を施工する下請負人の直接使用関係にある職員も対象とするものであるこ
  3. 死亡および障害等級第1級から第7級までにかかるすべての身体障碍
    を対象とするものであること(補償金額については問われません。)
  4. すべての工事が対象とするものであること(JV工事・海外工事を除く)
  5. 審査基準日(対象決算日)時点で保険契約等を締結していること

民間の保険会社では約款が必ずあるものですが、上記内容が含まれている契約なのか読み取れないことがよくあります。契約前には必ず、上記要件を示した上で経審対応のものであることを確認しましょう。
通常は審査基準日時点の経審用証明書を民間保険会社より発行してもらい、経審の際に提示します。

複数の保険会社と契約しており、それぞれの補償内容を組み合わせることで上記要件を満たす場合は、審査基準日時点で全ての要件を満たしていれば加点評価されます。

法定外労災で加点評価を受けるには、法定保険である国の労災保険に加入していることが前提として必要となります。

退職一時金制度とは

退職一時金制度とは、従業員の退職時に一時金を支給する制度です。企業ごとの自社退職金制度の採用状況、中小企業退職金共済制度の加入状況によって、決算日に定められていた又は契約を締結していた場合、社会性等において加点評価されます。

審査の対象としている退職一時金制度は以下の4つです。

  1. 労働協約において退職手当に関する定めがあること
  2. 就業規則に退職手当の定めがあること又は退職手当に関する事項について規則が定められていること(従業員が10人以上の場合は労働局への届出が必要)
  3. 勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部(中退共)との間で退職金共済契約を締結していること
  4. 所得税法施行令による特定退職金共済団体(特退共)との間でその行う退職金共済について退職金共済契約を締結していること

経審の審査にあたり、自社退職金制度については労働協約、就業規則、退職手当に関する規則などによって確認され、中退共に加入している場合は加入証明書など、特退共との契約締結の場合は加入証明書、契約書又は領収書などを提示します。

なお、中小企業の退職金制度としては、建退共と中退共がありますが、1人の人が両方に加入することはできません。現場技術者は建退共に加入し、事務職や営業職は中退共に加入することが一般的といえます。

また、就業規則の中に退職手当の定めとして「建退共による退職金の支払い」とあるだけの場合は加点対象としては認められません。この場合は別途、退職給与引当金を設定して退職手当の定めも変更する必要があります。

中退共とは

中退共とは「中小企業退職金共済制度」のことをいい、中小企業退職金共済法に基づき勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部が国の援助を受けて運営する中小企業向けの退職金制度です。
加入証明を提示すると、社会性等の評価Wの「退職一時金制度」で加点評価されます。

この制度は、事業主・役員・建退共加入者・臨時の雇用者を除き、誰でも加入することができますが、建設業では常用労働者が300人以下または資本金が3億円以下の企業に制限されています。掛金は損金または必要経費として処理できます。

企業年金制度とは

経審では以下4つの場合、社会性等の評価Wで加点評価されることとなっています。

  1. 厚生年金基金制度
    厚生年金保険法にもとづき、企業ごと又は職域ごとに厚生年金基金を設立して老齢厚生年金の上乗せ給付を行うもので、この基金によって運営される退職年金
  2. 適格退職年金制度(平成14年4月以降の契約に限る)
    企業が拠出額を信託銀行、生命保険会社などに預託して退職年金を支給するもので、税法上の優遇措置が認められた社外積立型の退職年金
  3. 確定給付企業年金制度
    事業主と従業員が年金内容を約し、高齢期において従業員はその内容にもとづいた年金の給付を受けるもので、厚生年金基金制度の代行部分を国に返上した「基金型」と適格退職年金制度に受給権保護などに加えた「規約型」があります。
  4. 確定拠出年金制度(企業型)
    厚生年金保険の被保険者を使用する事業主が、単独または共同して、その使用人に対して安定した年金給付を行うもの

建退共とは

経営事項審査の評価項目にある「建退共」とは、正式な名称を「建設業退職金制度」といい、中小企業退職金共済法に基づき国が制定した制度です。
経審申請用の加入・履行証明書などを提示することにより、社会性等の評価Wで加点評価されます。

この制度は、建設業の事業主が勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業と共済契約を結んで共済契約者となり、建設現場で働く作業員を被共済者として、その作業員に交付される退職金共済手帳に働いた日数分の共済証紙を貼り消印をし、その作業員が建設業で働くのを辞めた際に退職金が支払われる制度です。

建設業を営む事業主であれば、元請下請の別を問わず全て加入することができます。
被共済者は、現場の作業員であれば月給日給にかかわらず、共済手帳の交付が受けられます。

事業主、役員報酬のみの役員は被共済者にはなれません。

建退共に加入するには、建設業退職金共済契約申込書と建設業退職金共済手帳申込書に必要事項を記入の上押印し、事業所所在地に建退共事業本部の各都道府県支部に提出します。
この掛金は、損金または必要経費として処理できます。

経審の際必要となる加入・履行証明書は、契約者が申出すると年間を通じて共済証紙の購入及び手帳の更新が適正になされているかの確認を受けて、交付されます。
なお、加入・履行証明書を発行する際には共済手帳受払簿と共済証紙受払簿の提出が必要となります。これは、対象労働者に支給される共済手帳と共済証紙の管理を徹底する目的で行われるもので、証紙の購入と労働者への支給状況を記載した2つ受払簿の作成が事実上義務付けられています。

公共事業を受注すると、その工事種別、発注者別に一定の割合で証紙を購入し、その領収書の提出を発注者から求められることがあります。工期中の現場作業員の退職金分を発注者が積算に計上しているので、証紙の購入状況を確認するためです。元請負人は下請負人に、就労期間内の被共済者数および延べ就労日数に応じて、共済証紙を交付することとされています。

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行政書士樋口祥弘

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